岸和田本町地区の概要
岸和田の城下町は、本町を中心に、次第に紀州街道に沿って南北に広がってゆき、江戸時代前半には、南北約1.6kmの範囲となりました。
城下の道は、所々でカギ状に屈折して敵の侵入を防ぐように作られています。現在、各町だんじりの腕の見せ所の一つとなっている屈折した道も、城下町ならではといえます。
岸和田本町地区には、城下町の雰囲気とともに、当時の町割、遺構がよく留められています。特に紀州街道の道筋には、その歴史を語る建築物などが数多く遺されており、本瓦葺き、中二階、出格子の立面で構成されるまちなみは、城下町としての風情を保っています。
本町地区での取組み
私たち「本町のまちづくりを考える会」は、まちなみの個々の建築物の老朽化対策を契機として、わが町への誇りと愛着を原動力に、平成6年設立当初から歴史的まちなみを守り活かすまちづくりに取り組んでいます。
平成6~15年までは、国の街なみ環境整備事業を活用し、岸和田市と連携しながら町家の修景等のハード整備を実施しました。
また、地区内の所有者個人も、現存する蔵・町家等の歴史的景観建築物の保全や、面影が失われつつある町家の再生に取り組んでいます。加えて、新築の際や、町家ではない一般建築物等の修景も行っています。
また、協議会独自の取組みとしては、地域の美化活動、手づくりイベント「紀州街道にぎわい市」、その前夜祭「夢灯路」、研修活動、及び他団体との交流等、主にソフト的なものを中心に取り組んできました。
このような継続的な活動をきっかけとして、現在では多くの方が訪れてくださるようになり、岸和田ボランティアガイドの申込みが増加したり、ウォーキングイベント等のルートに設定されるようになりました。
これからも、美しく落ち着きあるまちなみに磨きをかけていきたいと考えています。
さらには、城周辺や商店街ともつながりを持って、訪れる人に感動を与え、若い世代も住み、子どもが健やかに育つような元気あるまちづくりを目指しています。
新たなまちづくり活動
まちなみ形成・板塀プロジェクト
前述のように、町家等の修景が進んでいる一方で、まちなみの連続性が途切れる部分のブロック塀やトタンが目立つようになってきました。
まちなみの連続性を高めていくためには、これらに手を加えて修景を行う必要があります。しかし現段階で充分な機能を有している物件について、老朽化等を契機とした所有者個人の修景機会を待っていては、まちなみとしての連続性を高めていくことが、遅々として進みません。
そこで本町のまちづくりを考える会の専門チームの一つとして「まちなみ景観研究チーム」を立ち上げ、ブロック塀やトタンの所有者と交渉し、壊すことなく、板塀を設置していく「まちなみ形成・板塀プロジェクト」を実施しています。
平成19年度から始めた当該プロジェクトは、平成22年度末までに計7箇所、延長約128.5m実施しました。
また、平成23年度は祭礼準備が進む8月に、板塀プロジェクトの一環として、市役所別館の紀州街道側の塀(延長約100m)を白く塗装しました。実施にあたっては、『本町のまちづくりを考える会』の活動趣旨に賛同頂いた元岸和田在住の南カリフォルニア大学斎藤先生に防カビ剤を、日本ペイント㈱から塗料をご提供頂きました。また塗装にあたってのアドバイスなど、多くの方の協力のもと実施しました。
晩夏の青空を背景にした本町の献灯台や花台が、真っ白に甦った白塀によく映えました。
手づくり案内板プロジェクト
本町地区への散策者の増加が見受けられるなか、当協議会の「町家活用・商業活動推進チーム」が企画して、“おもてなしの心”を盛り込んだ「手づくり案内板」を設置しました。 地域資源であるだんじりのコマや梃子を用いて作製し、近隣住民と交渉し民地内に設置しています。
「まちづくりの館」の管理・運営
「懐かしい風景が残る町BEST77」(TV東京選定:07/7/7放送)で、岸和田市本町地区が68位に選定されました。全国各地の重要伝統的建造物群保存地区や日本都市景観百選(国土交通省選定)の錚々たる地区が名を連ねる中で、大阪府では唯一の地区選定です。 私たちのまちづくりは、わが町の誇りと愛着を礎とした、暮らしそのものです。
つまり、背伸びをして華やかな事業を推進するのではなく、無理なく、肩肘張らず、楽しみながら、できるところからの取組みを実施しています。 このように地道にワイワイガヤガヤと取組んだ結果、上述のように評価されたのだと思っております。決して「観光」を第1目的にしてきたわけではありませんが、現在では散策者が増加している状況です。
当地を散策してくださる方には、是非、暮らしが息づく、どこか懐かしさを感じるまちなみを味わっていただければと思っております。